ダイエット野郎

ダイエット業界でサラリーマンを続ける男のブログ

ダイエットの要「脂肪分解=加水分解」のメカニズムを分子レベルで解説

脂肪の分解とは身体が脂肪とういうエネルギー源を必要とした時に脂肪を使うために加水分解し血液中に放出することです。
脂肪分解は脂肪細胞内で起こる反応ですが分解経路自体は3本から構成されており3つの分解反応をまとめて脂肪動員と言います。
ダイエットで効率良く脂肪を減らすには常に脂肪を3本の分解経路を活性化する条件を満たし脂肪を分解し続ける必要があります。

f:id:kk2017-1122:20180813095430p:plain

 

この記事ではダイエットに必要不可欠な脂肪分解(加水分解)を細胞レベルのミクロな目線で解説しシェアさせて頂きます。

 

 

 目次

 

 

 

1.脂肪細胞内の構造と分解を担う者

脂肪細胞は脂肪を蓄える細胞です。脂肪細胞は細胞膜と核、そして脂肪滴と呼ばれる脂肪そのものが大部分を占め構成されています。この脂肪細胞内の脂肪滴を分解する為に特定の酵素やタンパク質を活性化する必要があります。

f:id:kk2017-1122:20180813100059p:plain

 

 

脂肪細胞の構造と名称

  • 脂肪細胞:「核・脂肪滴・細胞膜」からなるものが脂肪細胞です。主に食事から余ったエネルギー源を脂肪として蓄積する貯蔵庫の役割を果たす細胞です。


  • 脂肪滴:脂肪細胞の中に存在する中性脂肪(トリグリセリド)を蓄える袋のようなもので、脂肪滴が大きくなることで脂肪は大きく肥大化していきます。


  • :真核生物(核がある生き物)の細胞を構成する細胞内小器官の一つで、核の中には染色体が存在し遺伝情報の保存と伝達を行います。

 

 

 

脂肪分解(加水分解)を担う酵素やタンパク質

脂肪分解(加水分解)を起こすものは酵素(キナーゼ・リパーゼ)とタンパク質の
大きく分けて2つが存在します。
脂肪分解に有効な条件が揃うと酵素とタンパク質が融合し分解に適した形に変わる事で特異的に脂肪を分解してくれるのです。

f:id:kk2017-1122:20180813100435p:plain

カテコールアミン
  • アドレナリン・ノルアドレナリン:脂肪を分解する為に必要となる神経伝達物質です。

  • カテコールアミン受容体:アドレナリン・ノルアドレナリンなどのカテコールアミンが結合する受け口です。

酵素(キナーゼ)
  • PKA(プロテインキナーゼA):カテコールアミンが結合することで活性化し脂肪分解に必要な酵素やタンパク質を分解に適した形に変える(リン酸化結合)役割をする酵素です。

酵素群(リパーゼ)
  • HSL(ホルモン感受性リパーゼ):脂肪分解に必要な分解経路を構築する酵素です。

  • ATGL(脂肪細胞特異的トリグセリドリパーゼ):中性脂肪に対して特異的に反応し分解経路を構築する酵素です。

タンパク質
  • ペリリビン:PKAと同様にカテコールアミンによる刺激によって活性化し脂肪分解経路を構築するタンパク質です。

  • CGI-58:カテコールアミンによる刺激によってATGLを活性化させるタンパク質です。

 

 

 

 

2.脂肪分解が促進される体内条件

まず脂肪分解(加水分解)を行うためにはエネルギー源が体内にあっては難しいです。逆にいうと糖やグリコーゲンなどのエネルギー源が不足する状況下ではエネルギー源を補うために分解が起こるのです。

f:id:kk2017-1122:20180813101920p:plain

 

 

血糖値が低い状態

我々の身近なエネルギー源はグルコースやグリコーゲンなどの糖類です。

糖は血液中に血糖という状態で放出されることで体中に運ばれエネルギー源として使われます。

しかし運動時や食べ物を食べていない時は血糖値は下がってしまいエネルギー源不足となります。

  • 運動している時:運動中は常にエネルギー(ATP)を消費しているので体内にあるグリコーゲンや血糖などのエネルギー源が減少します。その結果足りないエネルギー源を補う為に脂肪を分解し燃焼しエネルギーを生産するのです。

  • 空腹の時:食べ物を食べていないということはエネルギー(ATP)を生み出すエネルギー源が不足していることになります。エネルギー不足を補う為に蓄えてある脂肪を分解し燃焼することでエネルギー不足を補います。

 

 

 

分解のシグナルであるカテコールアミン

血糖値が下がると糖というエネルギー源の代わりに脂肪を使わなければなりません。

ただ脂肪は脂肪細胞内の脂肪滴から分解し脂肪酸という形にしなければ使えないので分解するためにカテコールアミン(アドレナリン・ノルアドレナリン)というホルモンを分泌するのです。

 

 

 

 

3.脂肪分解に必要なホルモン(カテコールアミン)

カテコールアミンとは「アドレナリンやノルアドレナリン」に代表される神経伝達物質のことです。人や動物の体は栄養状態の悪化やエネルギー不足を感知すると貯蔵している脂肪を分解するために必要なカテコールアミンを分泌します。

f:id:kk2017-1122:20180813102718j:plain

 

 

カテコールアミン分泌条件

カテコールアミンの中でも脂肪分解に直接作用する物はアドレナリン・ノルアドレナリンです

アドレナリンは自律神経でいう交感神経が優勢になっている時や分泌にされます。そして特異的に分泌を促す成分を摂取することでも分泌が促されます。

食事による分泌
  • 糖質制限:体内で速やかに、そして一番早く優先的にエネルギー源として消費される糖質を断つことで身体は脂肪をエネルギー源として活動しなければなりません。つまり糖質制限はカテコールアミンの分泌を促し脂肪を分解する最高効率の食事制限なのです。

  • カロリー制限:カロリー制限は一時的なエネルギー源不足を作り出す食事制限です。今までの食事で得られていた摂取カロリーが減ってしまうと減った分を取り戻す為にカテコールアミンを分泌し脂肪を分解するという単純だけど効果が高い食事制限です。

運動による分泌
  • 一時的なエネルギー源不足:運動時は常にエネルギー源を燃やしエネルギーを消費しています。つまり運動中はエネルギー不足状態になりやすいので脂肪を分解する必要があるのでカテコールアミンも分泌されます。

  • 一時的な肉体へのストレス:運動時は激しく動く事で興奮したり肉体的にストレスを受けたりする事も多々あります。つまり運動時は交感神経優勢の状態なので身体を守る為にもカテコールアミンを分泌し栄養状態に気を配っている訳です。

特異的な分泌
  • EPA・DHAの摂取:京都大学の研究ではEPA・DHAを含むオメガ3脂肪酸を摂取することでアドレナリン・ノルアドレナリンなどのカテコールアミンの分泌が促進されると報告があります。


  • カプサイシンの摂取:唐辛子に多く含まれる辛味成分であるカプサイシンを摂取すると、カプサイシンは脳に運ばれ中枢神経系を経てアドレナリンの分泌を促します。

 

 

 

 

4.カテコールアミンによる分解酵素(PKA)の活性化

脂肪細胞の外側の細胞膜にあるカテコールアミン受容体にカテコールアミン(アドレナリン・ノルアドレナリン)がくっつくと脂肪細胞の内側にあるPKA(タンパク質リン酸化酵素)の活性が上がります。

f:id:kk2017-1122:20180813103813p:plain

 

 

PKA活性化=脂肪分解システム始動

受容体にカテコールアミンが結合することで脂肪細胞内にあるPKGの活性が上がり
脂肪分解を担う「タンパク質・リパーゼ」を活性化することで脂肪分解は始動します。

 

 

 

 

5.PKAによる「タンパク質・リパーゼ」の活性化

PKAが活性化することで脂肪分解に必要な「タンパク質・リパーゼ」がリン酸化されます。このリン酸化によって脂肪分解の働きが上がり分解が進みます。

f:id:kk2017-1122:20180813104030p:plain

 

 

PKA活性化によるリン酸化反応

リン酸化反応によって何故脂肪の分解が起こるかというとリン酸化による構造の変化によって機能も変わるからなのです。

つまり脂肪分解を担う「タンパク質・リパーゼ」がリン酸化によって脂肪分解に適した構造に変化することで脂肪分解が開始されるということです。

 

 

 

 

6.脂肪分解は3つの分解経路で同時進行する

脂肪分解を担う「HSL・ペリリビン・ATGL」などのタンパク質や酵素群はPKAの活性化によるリン酸化反応によって各自脂肪分解に適した形に変形し、3本の脂肪分解経路を構築します。

f:id:kk2017-1122:20180813104238p:plain

 

 

脂肪動員と呼ばれる脂肪分解ルート

脂肪細胞内の中性脂肪は細胞外へ加水分解されて放出される時に3本の放出経路を使って効率よく分解放出されます。

この3つの脂肪分解をまとめて脂肪動員と位呼ばれます。

脂肪分解経路1
  • PKAとHSLによる脂肪分解経路

脂肪分解経路2
  • PKAとペリリビンによる脂肪分解経路

脂肪分解経路3
  • CGI-58とATGLによる脂肪分解経路

脂肪の分解はカテコールアミンによるPKAの活性化から始まり最終的に3本の分解経路を構築し中性脂肪は脂肪酸に分解され血中に放出されるのです。

そして分解された脂肪酸はアルブミンというタンパク質と結合することで遊離脂肪酸という移動できる形態に変わり血液中を移動して体の各組織に存在するミトコンドリアに運ばれ代謝されるのです。

 

 

 

脂肪分解(加水分解)順序・仕組まとめ

①エネルギー源不足によりアドレナリンなどのカテコールアミンが分泌される

②脂肪細胞外側にある受容体にカテコールアミンが結合することでPKAが活性化される

③PKA活性化により脂肪分解を担う「HSL・ペリリビン・ATGL」などのタンパク質や酵素群がリン酸化される

④リン酸化によって脂肪分解を担うタンパク質やキナーゼが脂肪分解に適した構造に変化し3本の分解経路を構築することで中性脂肪は脂肪酸に分解される

⑤分解された脂肪酸はアルブミンというタンパク質と結合し遊離脂肪酸になることで血液中を移動し燃焼機関に運ばれる

 

これらの工程を経て脂肪細胞に蓄えられている中性脂肪は分解され遊離脂肪酸となりミトコンドリアに運ばれて燃焼(β酸化)されるのです。

ダイエットは脂肪を減らす為に行う健康療法です。そして脂肪は分解しなければ燃焼することができません

分解する為にはアドレナリンなどのカテコールアミンを分泌する必要があるので、分泌を促し脂肪を分解し続けるために食事制限が必ず必要となるのです。

 

脂肪の分解の具体的な方法が知りたい方は下の記事をご参照下さい。

www.diet-soundsgood.com

 

 

 

以上で脂肪分解(加水分解)に関する記述を終えさせて頂きます。

ダイエットでは「脂肪の分解」というキーワードをよく耳にしますが、実際に体内では複雑な反応を経て3つも脂肪を分解する経路を構築し必要な時に効率よく脂肪をエネルギー源として使うためのシステムが備わっているのです。

とてもアカデミックな内容で難しい内容でしたが、この記事に辿り着いたあなたの探求心がダイエットのプラスになることを祈っています🌸